接客で一番怖いのは、今回の質問にでている「慣れ」です。接客の経験年数が長くなるほど、「おもてなしをす
る」という心が徐々に薄れ、少しずつ言葉は悪いですが「やってやっている」と、「お客様よりも上の目線」で仕事
をする人が多くなります。
そうなると、お客様を一番に考えるのではなく、自分たちの仕事を優先したり、また、すべての仕事が接客では
なく「作業」になる可能性もあります。
先日もあるお店で体験したことなのですが、食事の途中にこちらが要望したわけではないのですが、女性スタッ
フの方が「冷たいおしぼり」を提供してくれました。
一見すると、非常に「気の利いたサービス」でこの行為自体はとてもすばらしいものです。しかし、残念ながらこ
の女性スタッフは「おしぼりを提供する」という仕事を行っていること自体に満足してしまっているようで、おしぼり
の提供時の表情は硬く、また提供方法も作業的で、言葉は悪いですが「はい、冷たいおしぼり持ってきました
よ。気が利いてるでしょ!」と言った雰囲気に私は感じてしまったのです。
私は接客というのは、やはりひとつひとつの作業が「お客様の気持ちになって」という心配りと、「お客様を少しで
も喜ばせたい」という気持ちがなければ意味がないと思っています。
たとえば、動作が機敏でなくても、あるいは仕事に慣れていないようなスタッフであっても「お客様を少しでも喜ば
せたい」という気持ちで接客をするスタッフの方が、お客様の満足度は高いのではないかと思います。
そういった意味でも「お客様の目線」で「お客様を喜ばせる」接客をスタッフに意識づけさせることが、接客レベル
を向上させるためには非常に重要になってきます。
さて、こういった意識を持たせるための効果的な教育方法ですが、私が実際に行っている教育をご紹介します。
接客のある場面(例えば、出迎え)のロールプレイングを二人一組で実施します。
一人は接客者。もう一人は、お客様。
単にロールプレイングをするのではなく、実施する前に注意点を与えます。
まず、お客様役になったスタッフは、お客様の視点でスタッフ役の接客をどのように感じるかを考えながら、お客
様役をやること。
もうひとつは、どのような接客をやればお客様としてお出迎えだけで「おーこの店は他の店と違うな」と感じさせる
ことができるのかを考えてもらう。
この2点に注意しながら、お互いが交互にロールプレイングを繰り返します。その後、4名程度のグループになっ
て、この2点についてのミーティングをし、「お出迎えのあるべき接客像」を考えてもらいます。
このロールプレイングをする狙いは2つ。
1:お客様側の視点に立たせること
2:接客の「あるべき姿」を考えさせること
先ほども記載しましたが、接客の経験年数が長くなると「お客様の立場」で接客を考えることが少なくなります。
そのため、自分たちの都合で接客することが多くなってしまうのです。このロールプレイングは、まず、改めて
「お客様の立場」で接客を考えさせるのです。
もうひとつの狙いは、接客年数が長くなると「慣れ」が生じます。これはある意味「成長が止まった状態」と言えま
す。つまり、「これ以上向上することはできない」という意識が強すぎるからだとも言えるのです。常に向上意識
があれば、仕事に「慣れ」は生じにくいはずです。
改めて、各接客場面でのあるべき接客を考えさせることで、「まだまだ接客には考えるべきことがあるんだ」とい
うことを考えさせるのがこのロールプレイングの2つ目の狙いなのです。
こういった研修継続して続けることが、店のレベルUPにつながります。ぜひ実践してみてください。
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